Urban Architecture Planning Partnership
           
















  『IMS 劇団の家』
 劇団の主催者と劇団員、そして劇団のための住宅です。
 暫くの間スタディと打ち合わせを繰り返すうちに、この住宅の真の依頼内容が次第に呑み込めてきました。大学教員であり劇団の主宰者であるクライアントは、自らの劇団のための稽古場とその劇団事務所、そして自らと劇団員が生活するための住居、その三つが一体となった建築空間を要求していました。
 稽古場には一般的な劇場の舞台空間を再現できる広さ(7間×4間)が必要であり、稽古場公演やレコーディングスタジオとしての活用も想定されていました。稽古場には、近隣への配慮ための高い防音性と、稽古時に籠った熱気を一気に換気できる大きな開口部が求められていました。
 その矛盾する要求は、内外問わず住宅用既製サッシュを二重使用することで満たすことにしました。それはあらゆる可動開口部の中で最も安価であり、性能値が明示されています。この建物の前面側空間が既成サッシュだらけの箱になっている理由はここにあります。
 劇団の事務所部分は、劇団の拠点としてのみならず、稽古場公演の際の待合室や更衣室を持ち、デザイン事務所(自らの公演ポスター制作等で培ったデザイン技術を活かした)としても活動を広げることを想定しています。
 居住部は、劇団員との共同生活にも対応できるよう3人分の小さな個室を確保しました。その寸法のギリギリさと肩が触れ合うようなプライバシーの境界性は、「潜水艦や船の内部のような居心地の良さ」との評価をもらっています。
 つまり、この建築物は、舞台創造と生産(なりわい)と生活のせめぎあいで成立しています。そして、それらの機能を限られた予算内で実現するため、(被災地ではコンクリートの価格高騰が深刻であるため防音性に優れたコンクリートが最小限しか使えず)在来木造工法を採用し、性能を満たす最小限の材料と、各室の高さはサッシュの製作可能限界で決まっていたりします。つくる側から見ると、防音性能や経済的合理性、被災地の特殊事情など、様々な要因の緻密な構築物であるとも思う。
 時々クライアントがこの建物を形容する「母船」という言葉が、私は好きです。劇団員たちは自分を自由に表現し、それをお金に換え、みんなで生き方を共有する。それを繰り返して少しづつ、先の見えない未来に向かって闇を切り開き、歩んだ足跡を残してゆくそういった空間をイメージします。




緑の中に、踊りと住むが一体化した建築です。

周りの緑に溶けこむような、ガラスのファサード。
通りからは、ファサード越しに、スタジオがみえます。

公園のような緑道へ面して、3畳から5畳程度の小さな個室が集まった2.7mの白くて薄いボリュームが置かれています。

ベンチ付きのデッキ空間。

駐車場側ファサード。遮音を考慮した箱のようなシンプルな外観。踊りのための大空間ボリューム。
右手奥の白いボリュームがアプローチです。

アプローチを若干下ったところに玄関があります。


玄関を入ると、緑道を上るような、軽やかな階段があります。ここを上階に上ると、スタジオのスペース。ここを右に、一階へ行くと、居住スペースです。

1階は路地のような廊下を介して、真っ白い各部屋へアクセスします。
路地は、キッチンスペースや、収納スペースになっています。
白いボリュームとスタジオボリュームのずれた2階の空間から採光を取っています。

半地下のキッチン空間と真っ白いダイニングの空間、そしてデッキ空間が繋がる。

1階は、どの部屋からも開放的なデッキ空間に出ることができます。

デッキ空間は緩やかに視線を遮り、緑道の緑と繋がります。

白い空間(寝室、浴室、ダイニング、トイレ、玄関)と路地は床と天井にズレが有り、各室と路地を分節しています。
廊下の突き当りには採光用の開口があり、(たいして広くないながらも)抜けのある路地空間となっています。

階段室。緑道への縦の空間。

緑と踊りに挟まれたラウンジ。奥が階段室、右手にスタジオへの入り口があります。
サッシとサッシに挟まれた薄い空間は、スタジオの遮音の効果を高める。

ラウンジから緑へ繋がる。天井高は3.1m。

ラウンジからワークスペースを見る。
スタジオのボリュームがずれて接しています。床がずれることで一階路地とも柔らかく繋がっています。

ワークスペースからラウンジ、階段室と緩やかに繋がる。
壁は、本棚や手洗器、収納、ロッカーなど役割ごとに様々な厚みをもたせています。これらは(目立たないですが)構造壁として、地震力に対応しています。
構造壁でありながら、エアコンや本をシンプルにまとめた肉厚な壁です。

ワークスペースは緑道とスタジオに挟まれた、巾2.7mの空間です。スタジオで発生する大音量(最大120dBを想定)を既製アルミサッシュを二枚経由させることにより、ほぼカットしています。

ラウンジに繋がる。
真っ白い空間の床と天井に段差を設けることで、異質な空間にメリハリをだし、スタジオに浮遊感をもたせています。

防音を配慮した大空間のスタジオ。
床、壁4面、天井ごとに役割、要素をまとめ、スタジオスペック(防音/遮音/音響効果/採光/通風/照明/ダンスバー/ダンスフロア)を徹底的に追求することで、シンプルで機能的なミニマムな空間を目指しました。
奥の個室の奥行きが薄いことで、外部のミドリとの距離が近く感じる空間になっています。

スタジオは7.2mx14mの大空間を確保しています。これは凡そ多くのホールの舞台の大きさを反映したものです。ここで、本番さながらの練習が可能です。
音響の効果(音の跳ね返りをおさえる)を高めるため、天井と床、向かい合う壁と壁を正対させ邸ません。天井が若干傾斜していたり、壁がハの字に開いたりしており、音の単純な跳ね返りを避けています。

踊りのための14mのカガミ。踊りのための目地のないダンス専用無垢フローリング。
上部のサッシも防音のため、2重サッシとしてあります。

LED照明による個別調光で様々なシーンが作れます。
ライティングレールによるスポット照明にも対応しており、稽古場公演が開催可能です。

スタジオの壁と天井は吸音に配慮し、木毛セメント板を粗く塗装してある。
両側の壁にダンスバーが2段設けられている。

スタジオのカガミが空間を増幅させ緑に繋がる。
上部のスリットからは街並にの屋根と空が見える。

更衣室からスタジオへ。スタジオ空間は、踊り手にとって特別な場所なので、各部屋から1段上がって、スタジオのボリュームへアクセスするようにしています。

2階の各部屋はどこからでも緑が見える。

夕景

夜景





■IMS 劇団の家

所在地 /仙台市泉区
主要用途/住戸 兼 アトリエ

構造・構法-------------------------------------
主体構造 木造2階建て
基礎   ベタ基礎
規模-------------------------------------------
敷地面積 291.25u
建築面積 137.05u
延床面積 199.95u
工程-------------------------------------------
設計期間 2012年12月〜2013年8月
工事期間 2013年 9月〜2014年4月
敷地条件---------------------------------------
第1種住居地域
道路幅員 西6.0m


撮影 : 小関 克郎